「なんで政治家の人気取りに、こっちが付き合わなきゃいけないんだ」
「議員の都合で、どれだけ時間を削られるんだ…」
「ほとんど働いてないあの人のほうが、給料が高いのは納得いかない」
「アホらしい…」そう感じたことはありませんか?
公務員として働いていれば、何度も感じたことがあるのではないでしょうか。
なぜ公務員の仕事は、ここまで「アホらしさ」を感じやすいのか。
どんな仕事が、その感覚を生み出しているのか。
そして、どうすればこの消耗から距離を取れるのか。
この記事では、「なぜ公務員の仕事がアホらしく感じてしまうのか」を整理し、その正体と、心をすり減らさずに働くための対処法を解説しています。
世の公務員が「アホらしさ」に整理をつけ、前を向いたり、逃れたりする一助となれば幸いです。
公務員とは「制度のインフラ」

そもそも公務員の仕事とは何でしょうか?
結論から言うと、公務員の仕事は「制度のインフラ(土台)」です。
インフラと言えば、水道や道路、学校、公園、図書館といった物理的なものを想像する人が多いと思います。
しかし、住民票や税金、国民健康保険、児童手当、保育、教育、障害福祉サービスなどの制度を回している公務員もまた、人々の生活に欠かせないインフラと言えます。
さらに役所の総務課や人事課、財政課なども、公務員がちゃんと働くためのインフラなわけです。
ですから、突き詰めると公務員の仕事はすべてインフラです。
私は、日本社会を支える公務員の仕事は、素晴らしいものだと思います。
警察官や消防士みたいにカッコよくなくても、保育士みたいに感動的でなくても、日本の社会を迅速かつ正確にまわし、さらに親切な日本の公務員は、海外のそれとはケタ違いにレベルが高いのです。
公務員のアホらしい仕事6選
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そんな素晴らしいハズの公務員の仕事ですが、「アホらしい仕事」というものにしばしば出くわします。
それは公務員の能力が低いから起きているわけではありません。
原因はもっと構造的なところにあります。
ここからはアホらしい仕事を6パターンに分けて解説していきます。
①誰かの私欲を満たす仕事

一番アホらしいのがこれかもしれません。
それは、誰かの私欲を満たすために、税金と人手が湯水のように使われる仕事。
本来なら住民のために使われるべきリソースが、なぜか“特定の誰か”の都合で一気に動き出す。
典型例が、選挙前だけ急に始まる”バラマキ”
「財源が厳しいので税金も社会保険料も減らせません」と普段は説明しておきながら、選挙が近づくと突然の大盤振る舞い。
給付金そのものに莫大なお金が使われているのはもちろんですが、実際にはその事務作業に大量の職員が駆り出され、その人が抜けた穴を埋めるためにどれだけ現場が疲弊することか。
他にも、本当に必要か疑わしき施設の建設計画(いわゆるハコモノ)。
誰から見ても「これが無いと生活がヤバいよね」という施設ならいいでしょう。
しかし現実には
「そんな建物、何になるの?」
「もっと他にお金を回すべきでしょ」
「少ない予算でやりくりしてる私たちは一体何なの?」
と思うようなケースの多いこと。
公務員の原則である「最小限の経費で最大の効果」 から最もかけ離れているのが、こういった”お偉いさん”になるわけです。
②議員・団体・有力者が持ってくる問題

議員や団体、有力者の方々がしばしば 「こんな問題がある!」と押しかけてくることがあります。
それ自体は問題はありません、問題なのは「すぐ対応しろ!」とすごい剣幕で、こっちの状況や他の問題を一ミリも見ないこと。
こちらは日々、少ない人員で様々な制度改正・プロジェクト対応をギリギリのスケジュール・予算で回しているわけで、「対処の優先順位」というものがあります。
しかし、これを無下にしては厄介なことになります。
「対応しないとは何事か」「人の命(または人権)がかかっている」などと論点を拡大して話がこじれていきます。
拒否し続けても、別ルートから圧力をかけてきたり(上層部に突撃)、腹いせに別の無理難題をふっかけてきたります(私は、一般人になりすました手下に、むちゃくちゃ開示請求された経験があります)。
ですから現実的な対処として、どうしても部長・課長あたりがなだめたり、すかしたりして、衝突を回避するのが最適解になってしまうわけです。
なんとも不毛。
これをガマンして、たくさん売上をあげられるなら、気も晴れるというものでしょうが、税収は変わりません。
強いて言えば、政治家個人の票田になるくらいでしょうか。
「自分たちの仕事なのに、自分たちで優先順位を決めれないのか」
そう思いませんか?
③議員が連れてくる一般人対応

これも公務員あるあるなんですが、議員が一般人を連れてくるパターンがあります。
普通なら「通常のケース」で済む話ですが、議員が持ってきた瞬間に、その案件は自動的に 「行政課題」に格上げされます。
議員としては、自分に票を入れてくれる大事な票田。
だから扱いを間違えると非常にややこしい。
無理に「通常のケース」としてハンパに扱うと、後から議会や委員会でめんどくさい質問が飛んでくることになるでしょう。
そうなると私たちはどう動くか?
「議員が連れてきた人だから」という理由だけで、絶対に問題が起きないように“過剰なまでの慎重対応” が必要になってきます。
書類一つにしても、説明一つにしても、
「これでクレーム出ないよね?」
「議会で突っ込まれないよね?」
と何度もチェックが入り、時間と人がどんどん吸い取られていくワケです。
④ムダな仕事でもやめない、現状維持への執着

「もういっぱいいっぱいですから、このムダな作業を省略させてほしい」と訴えても、上司が認めてくれない。
そんな経験、ありませんか?
なぜ、彼らは現状維持にこだわるのか?(省略が合理的である前提で)
それは彼らが「リスクはゼロにしないといけない」と信じているからです。
しかし、これはまったくの間違いです。
本質を掴み、本当に必要なことを見極め、そこだけに戦力を投入する。
これが戦争でも生存競争でもビジネスでも公務員でも同じ、生存競争の鉄則です。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」や「ノーリスク・ノーリターン」といった言葉があるように、攻めずに得るものはなく、現状維持にこだわった生物はことごとく滅んでいます。
いまの役所も少子高齢化で予算は減る一方であり、環境による淘汰が迫りつつあります。
少子高齢化が改善されない限り、間違いなく職員は減り続け、業務は年々複雑化し続けるでしょう。
にもかかわらず、せっかく提案しても上司は「もしかしたら何か起こるかもしれないから」
「もしかしたら」とは?
本質を見定めていないどころか、見定めようともしていません。
もちろん公務員の仕事は、無謀であってはいけません。
しかしだからと言って、石橋を叩くことすらせず、その場にとどまることを選択し続ければ、ジリ貧の未来は確実に近づいてくるでしょう。
その思考停止のツケを、負の遺産として後の世代に押し付け、自分だけ逃げ切るという、とても罪深い行為につながっていることを自覚していただきたいものです。
⑤働かない人のお守り|”安定”でトクしているのは誰?

公務員は、あらゆる職業の中でもトップクラスに「安定している」と言われます。
しかし、この“安定”の恩恵を本当に享受できているのは、ごく一部の人だけだということをご存じでしょうか?
むしろ多くの職員にとっては、この安定こそが足かせになっているのです。
というのも、日本の法律では労働者が非常に強固に守られていて、リストラの条件はめちゃくちゃ厳しい。
会社が経営難で、適切な指導も配置転換も全部試したうえで、それでもどうにもならなかった場合にだけリストラが認められます。
つまり、ほとんどの人はそのレベルに達しません。
負の遺産として組織に残り続けることになります。
さらに公務員には実質的なリストラ制度が存在しません。
ということは、民間よりもさらに“働かない人” をため込みやすい構造になっているわけです。
では、そのツケを誰が払うのか?
働かない人のお守りをしているアナタです。
働かない人は簡単な仕事だけを選び取り、難しい案件や面倒な調整はあなたのもとにやってきます。
働かない人は簡単な仕事をテキトーに済ませ(あるいはできてない)、あなたは大量の仕事を残業して処理します。
しかも、どれだけ頑張っても、どれだけ不公平でも、あなたと働かない人は同じ給料体系です。
「安定」とは、最底辺の人が安心して仕事できる仕組みのことを言うのです。
⑥クレーマーのご機嫌を損ねてはならない

本来クレーマーは、必ずしも役所にだけ現れる人々ではありません。
スーパーでも、飲食店でも、ネットショップでも、どこにでも出現します。
ただ、公務員にとって致命的なのは、民間と違って「クレーマーと関係を断てない」ことです。
民間なら「出禁」あるいは「返金するから無かったことに」で終了します。
でも役所の場合、クレーマーとの関係を断てません。
「もうあなたには住民票をあげません」「健康保険を使わせません」「税金いりません」のように関係を断つことができず、誰であろうとも半永久的にお付き合いを続けなければならないのです。
するとどうなるか?
「今後の付き合いを考えて、穏便にやりすごす」が最も賢いやり方になります。
そして穏便=丁寧に対応し続けることで、クレーマーにとって役所は「唯一自分を相手にしてくれる存在」になり、要求がエスカレートする。
そのたびに何十分、何時間も時間を奪われ、精神も削られ、本来やるべき仕事がまた一つ後ろにズレていく。
それでも、クレーマーとケンカ別れするわけにはいかないのです。
文句を言うのは子ども?大人になれ?
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本記事の冒頭で「公務員は“制度”のインフラ」だと言いました。
道路や水道と同じように、なくてはならない社会が止まる存在という意味です。
そして公務員にはよく、公平性・公正性・主体性・積極性とかがしばしば求められますが、現実にはもっと他のことが求められます。
公務員の上に政治・利権構造、安定といった不純物が存在する限り、現実的には“いかにインフラらしく、文句を言わずにたくさん働くか”が第一に来てしまうのです。
道路が「今日は気分が乗らないんで通行止めにします」とは言いませんし、水道が「この料金じゃやってられません」とストライキしないと同じです。
議員やクレーマーなどに逆らえない構造が残っている限り、公務員は“インフラらしく黙って言うことを聞け”が求められる宿命になっているのです。
では、そんな宿命を受け入れられずに、上からの指示や要求に対して文句を言うのは子どもなのか?
黙って従うことこそ“大人”なのか?
インフラの役割を果たそうとする者としては、そうなのかもしれません。
しかし、あなたがガマンできないのは、“我慢が足りない”からじゃありません。
むしろ「こうあるべき」という仕事にかける、強い熱意・責任感を持っているからです。
本当にどうでもよかったら、文句すら出ません。
どうでもいいのは無関心・無責任のサインに他なりません。
あなたはあなたが思っている以上に、仕事に対して誇り高く、熱い気持ちを静かに燃やしているのです。
本来なら、そんな人材こそが組織が一番手放してはいけない人であり、大人・子どもなんてどうでもいいことで、あなたがそんな誇り高く挑める事実に価値を感じてほしい、と私は思います。
おまけ|アホらしい仕事から逃れる方法

では、このアホらしい仕事から逃れる方法はないのか?
ひたすら耐え続けるしかないのか?
結論から言うと、逃れる方法はあります。
私自身、うまく立ち回ることで、人よりは「アホらしい仕事」を減らしてこれました。
今回はおまけとして、公務員のアホらしい仕事で消耗しないための方法を3つ紹介します。
方法①やらない

これは「④ムダな仕事でもやめない、現状維持への執着」への対策です。
もうコッソリやめます。
私は、上司にバレるリスクが低いと判断したら、静かに放棄していました。
たとえば「上司が見てもどうせ覚えていないような文書はいちいち上に回さない」などでしょうか。
もしバレたら「うっかり」ということにするつもりでした。
バレるリスクが低いのですから、ほとんど言い訳の出番もありませんでしたが。
やらない=サボる、と感じる人も多いかもしれません。
過激に感じるかもしれません。
しかし、現実的には、
- 「やらない」が最大の生産性向上である
- 人は仕事を無限に増やしてしまう
- そして、その仕事のほとんどは、目的に関係ないムダである
- たくさん仕事をこなすことがベストだと思っている人が多すぎる
という考え方を私はこういう本などで学びました。
人によっては非倫理的や独善的に思われるかもしれません。
しかし、実際は、アホらしい仕事をしないことで人件費を抑えるという、社会全体にとってプラスなことをやっているつもりであり、このことを後ろめたく感じたことはありません。
方法②出世しない

主に
「①誰かの私欲を満たす仕事」
「②議員・団体・有力者が持ってくる問題」
「③議員が連れてくる一般人対応」
への対策です。
理由はシンプルで、出世するほど上層部の政治・利権問題のど真ん中に近づくからです。
逆に末端でいればいるほど、この問題からは遠ざかり、見ることが少なくて済みます。
一方で、出世しないデメリットは「給料が低い」と「雑務・クレーマー対応を年をとっても回ってくる」いうことでしょうか。
ただ、公務員の場合、年功序列制のおかげでヒラでも給料は上がり続けます。
なので「ずっと最前線で働いていたい」という人なら、受け入れられるかもしれません。
出世しない現実的な方法としては
- 出世しても、降格願いを出し続ける(制度がある場合)
- 昇任試験を拒否し続ける(試験がある場合)
と制度を活用すれば可能です。
あと強者であれば、これに「好きな仕事しかやらない」が加わるかもしれません(そんな人なら出世しても問題ない気もしますが)。
法③転職する

正直、心理的なハードルは高いですが、全部に効く対策があります。
それが「転職」です。
公務員を辞めてしまえば、政治とか利権とか、クレーマーに言われるがままだとかの状況から解放されることができます(もちろん、似た業界を選ばない前提で)。
「どんな仕事でも、辛いことはあるでしょう?」と思うかもしれません。
確かにそのとおりです。
どんな職場にも、面倒な業務やストレスのかかる場面は必ずあります。
ただ「何が辛いか」「何なら耐えられるか」は、人によって案外違うものです。
食べ物の好き嫌いと同じです。
もしあなたがチーズが嫌いなら、いくら評価が高いイタリア料理店でも地獄に感じるでしょう。
「栄養がある」とか「食べログで高評価」とか言われても、口に合わないものは合わないのです。
一方で、醤油が好きとかなら、そういう人は日本料理店に行きましょう。
たまにチーズを使った料理が出てくるかもしれませんが、たまの話です。
料理でも仕事でも、人によって、好き嫌いが全く変わってくるものです。
だからこそ、めちゃくちゃ適性を発揮できるのは、自分の好き嫌いとその料理店の凸凹がピタっと合ったところを選べた人なのです。
嫌いなことをやらずに済みますし、気が付いたら終業時間になっている。
大量に仕事が来ても、あまり消耗しません。
転職はリスタートになりますが、「口に合わないところで40年間ガマンしつづける地獄」に比べたら、だいぶマシだと思います。
転職のやり方は、ほかの記事で紹介しています。
まとめ|制度のインフラである公務員の宿命
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公務員の仕事は、日本社会を支える「制度のインフラ」です。
それ自体は誇るべき、価値の高い仕事に違いありません。
ただし現実の役所には、公務員だからこその政治・利権・過剰な安定・クレーマー対応といった構造的な歪みがあります。
そして、その歪みが「何のためにやってるんだろ?」みたいな、アホらしい仕事を生みだします。
特に、まじめで責任感の強い人ほど損をする構造となっています。
もしあなたが「大人になれない自分が間違っているのだろうか?」と感じていても、それは未熟さでもワガママでもありません。
むしろ「仕事に熱い気持ちをかけたい」という確かな思いがある証拠。
そう考えていただければ、自分に対しては前向きに捉えられるではないでしょうか?
あなたの違和感は、間違っていないのです。
そして選択肢は、耐える続けるだけではありません。
やらない・距離を取る・転職する、の選択権はあなたが持っていることを忘れないでおきましょう。


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